※本記事に記載されている内容は、あくまでも筆者個人の感想および戦術的見解であり、公式な見解を示すものではありません。
FIFAワールドカップ2026、日本代表も同居する「死の組」グループFの第2戦。初戦で日本を相手に悔しいドローに終わり、早くもこれ以上の取りこぼしが許されない立場となったオランダ代表と、初戦のチュニジア戦で攻撃陣が爆発し勢いに乗るスウェーデン代表の一戦は、王座を狙うオランダが意地と圧倒的な修正力を見せつけるゲームとなりました。終わってみれば5-1という衝撃的なスコアでスウェーデンを粉砕し、オランダが決勝トーナメント進出へ向けて極めて大きな勝ち点3を手にしました。
試合は、初戦で手詰まり感を露呈したオランダのベンチワークと前線のアプローチがキックオフ直後から完全に機能します。前半5分にコーディ・ガクポ(ガクポ)のクロスからブライアン・ブロビー(ブロビー)が電撃的な先制点を奪うと、前半17分にはダンフリースのクロスから再びブロビーが沈めて早くもリードを2点に。後半に入ってもオランダの勢いは止まらず、後半2分と後半9分にガクポが連続ゴールを叩き込み、一気に試合を決定づけました。スウェーデンも途中出場のアンソニー・エランガ(エランガ)のゴールで1点を返し、スタッツ上は計17本ものシュートを浴びせて意地を見せたものの、終了間際の後半44分にはオランダのクリセンシオ・サマーフィル(サマーフィル)がトドメの5点目を記録。真価を問われた欧州勢対決を大勝で飾りました。
最終スタッツのシュート数では「オランダ11本 vs スウェーデン17本」、枠内シュートでも「7本対10本」とスウェーデンが数字上は上回ったものの、ゴール期待値「オランダ1.99 vs スウェーデン1.09」が示す通り、決定機の質と冷徹なフィニッシュ精度で格の違いを見せつけたオランダ。日本戦の反省を見事に活かしたその戦術的ディテールを徹底的に解剖します。
1. 両チームのシステムとゲームプラン:幅を活かしたオランダの「4-1-2-3」と、自信を持って挑んだスウェーデンの「3-1-4-2」
まずは、ピッチ上に並んだ両チームのスターティングメンバーと、それぞれの指揮官が用意したゲームプランから紐解いていきましょう。
オランダ:日本戦の反省を活かし、ハーフスペースの破壊にこだわった「4-1-2-3」
オランダは、前線の圧倒的な推進力と幅を活かすため、洗練された4-1-2-3(4-3-3)のシステムを選択しました。最終ラインは右からダンフリース、ファン・ヘッケ、主将のファン・ダイク、ファン・デ・フェン。中盤の底にフレンキー・デ・ヨング(デヨング)をアンカーとして配し、インサイドハーフにラインダースとフラーフェンベルフを配置。前線は右にマレン、左にガクポ、最前線にブロビーが構える強力な布陣です。
オランダのプランは明快でした。初戦の日本戦でトーンダウンを招いた反省から、立ち上がりからデ・ヨングを起点にテンポよく配給し、右のダンフリース、左のファン・デ・フェンの両サイドバックを高く押し上げてピッチを広く使うこと。相手の執拗なマークを逆手に取り、スウェーデンの3バックの脇(ハーフスペース)をガクポ(試合を通してドリブル成功数5回を記録)らが徹底的に攻略する狙いを持っていました。
スウェーデン:初戦の爆発を自信に、2トップの個で勝負する「3-1-4-2」
一方、初戦の勝利で大きな自信を掴んだスウェーデンは、3-1-4-2(守備時5-3-2)の可変フォーメーションを採用。最終ラインはラガービエルケ、ヒエン、リンデロフ。アンカーにカールストロームを置き、中盤にベルンハルドソン、アヤリ、ニグレン、グズムンドソンを並べ、前線はヴィクトル・ギェケレシュ(ギェケレシュ)とアレクサンデル・イサク(イサク)の破壊力抜群の2トップを配した陣容です。
スウェーデンの狙いは、オランダの中盤の配給をタイトに網を張って引っ掛け、奪った瞬間にギェケレシュのキープ力とイサクのスピードを活かして一気にロングカウンターへ移行すること。実際に彼らは試合を通して計17本ものシュートを放ち、オランダを脅かし続けました。
2. 【前半の攻防】手詰まり感を払拭したブロビーの電撃2発と、フェルブルッヘンの要塞セーブ
前半の45分間(アディショナルタイム含め51分間)は、オランダが少ないチャンスを確実に仕留めて2点のリードを奪う一方、スウェーデンもギェケレシュを軸に何度も決定機を作り出す極めてオープンな展開となりました。
前半5分&17分:ガクポとダンフリースのクロスから、ブロビーが圧巻の2ゴール
試合は開始早々の前半5分、左サイドを鋭くえぐったガクポが完璧なクロスを配給。これに最高のタイミングで中央に飛び込んできた最前線のブロビーが右足で冷静にゴール下に流し込み、オランダが早々と先制します。
【オランダ 1 – 0 スウェーデン】(前半5分)
スウェーデンも直後の前半7分にギェケレシュが抜け出して鋭い枠内シュートを放ちますが、オランダの守護神フェルブルッヘンがファインセーブ。ピンチを凌いだオランダは前半17分、今度は右サイドのダンフリースの高精度クロスに対し、再びエリア中央で完璧なポジショニングを見せたブロビーが右足でゴール左下へと流し込み、電撃的な追加点を奪いました。初戦で課題となった攻撃の停滞感を完全に払拭する立ち上がりです。
【オランダ 2 – 0 スウェーデン】(前半17分)
前半終了間際:ギェケレシュとアヤリの猛追を阻んだオランダの砦
2点ビハインドとなったスウェーデンは、前半33分、37分とイサクのタメからギェケレシュが連続して強烈な枠内シュースを放ちますが、フェルブルッヘンが立ちはだかりゴールを許しません。前半アディショナルタイムには初戦で覚醒した俊英アヤリやギェケレシュの直接FKなどで計9本ものシュートの雨を降らせたスウェーデンでしたが、オランダが2-0のままハーフタイムを迎えました。
3. 【後半の混沌】完璧に機能した指揮官のベンチワークと、ガクポの異次元の連撃
後半、オランダの指揮官は日本戦の反省を活かすようにハーフタイムに素早く手を打ちます。マレンに代えてサマーフィルを投入し、より流動性を高めると、直後にオランダが誇るウイングの個のクオリティが試合を完全に決定づけます。
後半2分&9分:これぞ世界クラス。ガクポが魅せた圧巻のダブレット
後半2分、右サイドを完全に崩したダンフリースのクロスに対し、エリア中央へ鋭く走り込んできたガクポが左足で合わせて3点目を記録。さらに後半9分には、左サイドから得意のドリブルで中央へカットインしたガクポ(この時点で5本以上のシュートを記録)が、右足でゴール左下隅へと鮮やかに突き刺し、4-0。ガクポの圧巻の活躍でスコアを圧倒します。
【オランダ 4 – 0 スウェーデン】(後半9分)
後半14分:スウェーデンの反撃と、ゲームを落ち着かせたオランダの「スクラップ&ビルド」
後がないスウェーデンも後半10分にエランガ、ゼネリ、ベリヴァルの3枚を一気に投入するトリプルチェンジを敢行すると、直後の後半14分、エランガがエリア中央から左足で鮮やかなシュートをゴール左上に突き刺し、1点を返します。
【オランダ 4 – 1 スウェーデン】(後半14分)
しかし、ここからのオランダのベンチワークは見事でした。日本戦のようにトーンダウンを招くことなく、後半14分にデ・ヨングとラインダースを下げ、コープマイネルスとフース・ティル(ティル)を投入。中盤の強度を即座に補強し、ゲームの主導権を手放しませんでした。
4. 【最終盤の死闘】サマーフィルが締めくくった完璧なエンディングと、フェルブルッヘンの10セーブ
最終盤、スウェーデンはイサクやギェケレシュ(ギェケレシュもこの試合で5本以上のシュートを記録)を中心に計17本ものシュートを浴びせ、オランダのボックス内を急襲します。後半40分にはゼネリが強烈な左足のシュートを放ちますが、守護神フェルブルッヘンがシャットアウト。
後半44分:サマーフィルが突き刺したトドメの5点目
スウェーデンの猛攻を完璧にいなしたオランダは後半44分、ハーフタイムから投入されていたサマーフィルがペナルティーエリア手前からの果敢なドリブル突破から右足を振り抜きます。狙い澄ましたグラウンダーのシュートがゴール左下隅へと吸い込まれ、決定的な5点目。指揮官の交代策が完全に実を結んだ瞬間でした。
【オランダ 5 – 1 スウェーデン】(後半44分)
アディショナルタイムに入っても、スウェーデンはラガービエルケが頭で狙うなど意地を見せましたが、最後まで高い集中力を保ったフェルブルッヘン(計10本の枠内シュートをセーブ)の牙城は崩れず、5-1というこれ以上ない圧倒的なスコアでタイムアップのホイッスルを聴きました。
5. 戦術的総括:勝敗を分けた3つのポイント
この熱戦において、オランダが5-1というスコアでスウェーデンを完全粉砕した要因は、以下の3点に集約されます。
① 批判を跳ね返した指揮官の「完璧なベンチワーク」とハーフスペースの攻略
日本戦での采配を批判されていたオランダの指揮官ですが、この試合では見事な修正力を発揮しました。ハーフタイムのサマーフィルの投入、そして失点直後のコープマイネルスらの投入により、チームのインテンシティを一切落とさずにゲームをクローズ。ガクポとダンフリースの縦関係を活かしてスウェーデンの3バックの脇(ハーフスペース)を徹底的に破壊した戦術眼は見事でした。
② ブライアン・ブロビーとガクポによる「前線の異次元の決定力」
この試合の攻撃を完璧に司ったのは、2ゴールを奪ったブロビーと、同じく2ゴール1アシストを記録したガクポのクオリティです。ブロビーの前半の圧倒的なボックス内でのポジショニングセンス、そして後半にドリブル成功数5回を数えてスウェーデンの右サイドを完全に破壊したガクポ。彼らの「個の破壊力」こそが、戦術の枠組みを遥かに越えてオランダに大きな勝ち点3をもたらしました。
③ 守護神フェルブルッヘンによる「計10セーブの要塞クオリティ」
オランダがこれほど盤石に戦えた隠れたMVPは、間違いなくGKフェルブルッヘンです。ギェケレシュの連続する決定的な枠内シュートや、最終盤のラガービエルケのヘディングシュートなど、スウェーデンの誇る強力なアタッカー陣の決定打をことごとくストップ(計10セーブ)。彼が最後方に君臨していたからこそ、前線のサマーフィルらが一切慌てずに5点目を仕留めるカウンターを完遂できました。
今後の展望:大混戦グループFの主導権の行方
グループステージ第2戦を終え、オランダ代表は見事に目標であった勝ち点3と、得失点差「+4」を獲得し、グループFの主導権を握ることに成功しました。初戦のドローから見事なカムバックを果たし、指揮官の修正力、ブロビーの完全復活、ガクポの戦術的フィット、そしてサマーフィルという強力なジョーカーの躍動は、次戦の対戦相手にとって凄まじいプレッシャーとなるはずです。
一方、大敗を喫し真価を問われる一戦で苦杯をなめたスウェーデンですが、ギェケレシュを中心とした伝統の鋭いサイドアタックやイサクの突破、そしてアヤリ(この試合でも5本以上のシュートを記録)が見せた積極的な姿勢など、そのポテンシャルは随所に見せました。決勝トーナメント進出への望みを繋ぐ第3戦に向けては、今回露呈したオランダのウイングに対するディフェンスラインのマークの受け渡しのズレをどう修正し、再びチームとしての規律を取り戻せるかが、この死の組を突破するための最大の生命線となるでしょう。
(執筆:サッカー解説者)

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